蓑に変わる雨具として、和紙を繋ぎ合わせ桐油と柿渋を引いたこしらえた紙合羽という物が日本にあった。誕生したのは元禄(1688-1704年)の頃だという。
合羽というと笹沢左保原作の股旅物時代小説をドラマ化した『木枯し紋次郎』(1972年フジテレビ)のなかで、主人公たちが着ている藍木綿の旅の合羽を連想してしまう。
現代人からは防寒性に乏しいような気がするが、藍無地や縞の合羽からは何か別の魅力が溢れ出ている気がする。
ドラマ主題歌「だれかが風のなかで」というのは、江戸の旅の衆を象徴しているような言葉だと感じている。
薄墨のなかから、大きな三度笠に、着丈の長い藍合羽を纏った旅人がすっと現れては消えてゆく。現とはいえそれは束の間の夢のようである。
雨具としての紙合羽は世の中からは消え去っていった。その後、効率が良く性能も高い代替え商品が世の中には溢れている。
ただ少し物足りない何かがそこにあるとするならば、この海千山千會の藍染和紙の蜜蝋引きポンチョが手がかりを与えてくれるかも知れない。 海千山千會 立沢木守
埼玉の谷野さんが作った楮(こうぞ)を徳島の渡邉さんが藍で先染し、ふたたび埼玉の谷野さんが巨大な藍染和紙に漉く。
蜜蝋を温め溶かしクッキングシートにそれを伸ばし塗ったものを、今度は逆さにして藍染和紙に乗せてアイロンがけし、
蜜蝋を和紙に定着させる。その巨大な生地を徳島の黒川さんがお母さんと二人がかりで振り回しミシンがけする。
こんなに非効率に人の手を掛けるポンチョづくりの工程の一部を、チーム谷四が丁寧に取材し映像作品にしました。